胃ポリープと類似疾患

胃ポリープ

 胃の粘膜面に局所的に隆起した良性病変で、肉眼的にはから型に分類されます。
1.胃底腺ポリープ
胃上部の胃底腺領域より発生する3-5mm径の小ポリープで多発傾向があり、粘膜の萎縮はともなわないことが多い。ピロリ菌のいない若い女性やピロリ菌除菌後の胃に時々認められます。放置してよいです。
胃体部に2-3mmの多発性ポリープが認められる

2.胃過形成性ポリープ
  •  ピロリ菌や粘膜の萎縮と関係し加齢にともない増大します。胃の集団検診での発見率は0.5%程度です。大きくなると出血や一部悪性化の危険性もあり、1cmを越えたら内視鏡的に切除が勧められます。
  •  ピロリ菌陽性の場合、除菌療法にてポリープが縮小、消失することもあります。

  • 胃角部に7mmのポリープを認めるピロリ菌除菌後1年後ポリープは消失


    胃腺腫

     胃ポリープと似ていますが、やや白っぽい扁平な小隆起で良・悪性の境界病変です。胃腺腫の頻度は内視鏡検査の1%程度とされ、自覚症状は表れず胃検診などの際、胃透視では見つかりにくく、内視鏡検査でたまたま5-10mm前後の扁平隆起性病変として見つかることがあります。高度の粘膜萎縮を背景に胃の体部や前庭部で見つかることが多く、ピロリ菌もほとんどの場合陽性です。大きくなると癌化しやすい前癌病変とされ内視鏡的切除の良い適応です。

    胃体部前壁に1cmの白っぽい胃腺腫が認められる

    胃黄色腫

     胃の粘膜面に見られる2-5mm径の黄白色の扁平な隆起性病変で、脂肪滴を取り込んだ組織球の集合したものです。 内視鏡観察者の2-3%に認められ、多発することも多いです。高度の萎縮性胃炎が基礎にあることが多く、ポリープや癌の合併頻度が高いです。皮膚の黄色腫は高脂血症と関連がありますが、胃黄色腫は無関係です。 ほとんど増大せず、放置してよい病変です。

    胃体部から前庭部に3-5mm径の黄白色の胃黄色腫が4個認められる

    鳥肌胃炎

        
    • 胃の前庭部に全周性に1〜2mmの小顆粒状隆起が均等にみられあたかも鳥肌状を呈します。   
    • 小児や若い女性に時々観察されピロリ菌感染早期の特徴的な慢性胃炎像です。   
    • その本態はピロリ菌感染に対する免疫反応の結果生じる粘膜面のリンパ濾胞です。
    • 胃の腸上皮化生との鑑別が問題ですが、粘膜の萎縮がなく結節の粒がそろっているのが特徴です。   
    • 上腹部の不快感や鈍痛を訴えることもあり、機能性胃腸症として対処されることも多いです。   
    • しかしピロリ菌除菌後、劇的に症状が軽快したり内視鏡的にも鳥肌状変化が改善、消失することがあります。   
    • ピロリ菌に対する生体の過剰反応の結果、若年者の未分化胃がんのハイリスクとの報告もあります。最近ようやく当院でも34歳男性例を経験しました。
    • 小児や若年者で胃・十二指腸潰瘍もないのに原因不明の鉄欠乏性貧血が認められることがあります。ピロリ菌が鉄の吸収を妨げることにより貧血をきたすと考えられています。原因不明の若年者の貧血を見た場合、ピロリ菌の検査と陽性なら除菌治療が勧められます。      


      
    24歳、女性。繰り返す上腹部痛、腹満感で機能性胃腸症として加療されたが軽快せず受診。

    通常内視鏡でわずかに白っぽい結節性変化

    インジゴカルミンの色素散布にて粒のそろった鳥肌状変化が明瞭化。

    初回内視鏡時の生検組織像でリンパ濾胞が明瞭

    Giemsa染色の鏡検でピロリ菌+
    ピロリ菌の除菌にて数日で自覚症状は軽快、1年後の検査でピロリ菌は陰性化。

    鳥肌状変化は平坦化、軽快


    インジゴカルミンの色素散布内視鏡像

    34歳、男性。心窩部痛のため胃内視鏡検査。幽門部に不整な潰瘍性病変

    ベースの粘膜に鳥肌状変化。ピロリ菌陽性で病理検査でリンパ濾胞多数。

    一見進行癌様を呈し、生検にて未分化癌が検出された。


    潰瘍が軽快後の手術で4.5x3.0cm Uc+Ub、粘膜下層浸潤の未分化の早期癌であった.。

    20歳、男性。めまいとHb 6.3 Fe 7の貧血あり、HPIgG>100 胃内視鏡検査で典型的な鳥肌胃炎の像。ピロリ菌の除菌と鉄剤投与で貧血は治癒。



      

    胃粘膜下腫瘍

     胃の隆起性病変で粘膜下に主病変のあるものの総称です。良性病変(迷入膵、脂肪腫、嚢胞など)から悪性病変(悪性リンパ腫、平滑筋肉腫、カルチノイド腫瘍など)までいろいろあります。従来平滑筋腫、平滑筋肉腫とされていた病変はc-kit遺伝子異常から発生する間葉系腫瘍であると解明され、GIST(gastrointestinal stromal tumor)と命名されています。自覚症状は認められず、小さい間は表面が正常粘膜で覆われた平滑な腫瘍で、大きくなると頂上部の中心陥凹や潰瘍形成が見られてきます。内視鏡検査とくに超音波内視鏡が診断的に有用です。一般的に急速に増大する腫瘍は悪性度が高く、定期的な内視鏡検査で3cm以上になると手術治療が必要といわれています。



    前庭部に10mmの小隆起を認める

    中心小陥凹より迷入膵と考えれる

    体上部に8mmのカルチノイド腫瘍を認め後に内視鏡的切除

    胃体上部に2cm大の凹凸を持った隆起性腫瘍

    超音波内視鏡では固有筋層由来の不均一な低エコー腫瘍

    手術にて2.1cm径の白っぽい充実性粘膜下腫瘍

    ルーペ像では紡錘形細胞からなる充実性腫瘍

    免疫組織化学染色でCD34+,C-KIT+でGISTであった

    胃上部に多発性の不整な腫瘍を認める


    中心に潰瘍形成を認め悪性リンパ腫であった

    胃透視で胃上部に多発性隆起

    化学療法後、胃上部の腫瘍は消失

    胃体部大弯に中心部に潰瘍を伴う不整な硬い隆起性病変

    その後の検索で乳癌の胃転移であった