胃アニサキス症と類似疾患

胃アニサキス症

  • 76歳、男性。夕食にシメサバを食べた後、夜中よりみぞおち部のきりき りした腹痛と嘔気を訴え受診されました。胃内視鏡検査にて胃の襞の芋虫状腫大と生きたアニサキス虫体を6匹確認し、鉗子にて虫体を摘出後、急性胃炎として治療し症 状は軽 快しました。
  
  • アニサキスはオキアミから食物連鎖でクジラに至るまで魚の腸管に寄生す る蛔虫の一種で1-2cmの糸ミミズ状で加熱に弱いが塩や酢に強い。比較 的 多くみられるのはシメサバやイカの刺し身食用後の胃アニサキス症で、 虫体刺入に伴うアレルギー反応で腹部症状を発症し内視鏡的に虫体を摘出 す れば症状はおさまります。

旋尾線虫症

  • 63歳、男性。宴会で深酒をした後、嘔気、腹痛を訴え来院されました。胃 内視鏡検査にて食物残渣の停滞を認めたが潰瘍性病変はなく、急性胃炎(い わゆる二日酔い)として治療しました。しかし症状は軽快せず、腹満感、腹部全体の痛み、嘔気が増悪してきました。翌日の腹部エコー、X線写真 にて小腸ガスに鏡面形成をともなう亜腸閉塞の状態が確認されました。食歴を聞きますと2日前にホタルイカの刺身を食べたとのことでした。旋尾線虫症による亜腸閉塞として、絶食、補液、保存的に薬物治療を行い症状は数日で軽快しました。

  • 旋尾線虫はアニサキスと似ていますが、10mm弱の糸みみず状の線虫で、胃を素通りして小腸に刺入し亜腸閉塞やごくまれに腸管を穿通して腹壁の 皮膚に移行し皮膚爬行症を引き起こします。感染は4月-5月頃のホタルイ カの生食(刺身)によることが多いようです。保存的治療でほとんど数日で治癒し ます。