下痢について

  • 下痢とは水分を多く含む形のない糞便を排泄する状態です。
  • 消化液として小腸に流入する水分は一日約9Lで90%以上が小腸・大腸で再吸収されます。
  • 下痢の機序としては
    1. 水・電解質の分泌亢進
    2. 腸管からの水分の吸収障害
    3. 腸管の運動亢進などより起こります。

下痢を起こしやすい病気
    1.過敏性腸症候群
     最も頻度が多い。夏場に腹部を冷やしたり、清涼飲料水を飲み過ぎたり、心配事やストレスが重なって起こります。腸管運動の亢進のためと考えられ、栄養の消化吸収は保たれているため体重が変わらないのが特徴です。
    2.感染性腸炎
     肉類に付いているサルモネラ菌、大腸菌、魚介類に付いている腸炎ビブリオ菌などによる細菌性腸炎で食物を介した炎症です(いわゆる食中毒)。また冬場に子供などに多い上気道炎症状を伴ったウイルス感染(ノロウイルス、ロタウイルス)による急性腸炎もあります。
    3.薬剤性腸炎
     抗生物質や消炎鎮痛薬などの薬剤の副作用による腸炎もあり、原因となる薬剤の中止にて軽快します。
    4.慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎クローン病
     若い人にまれに見られ、慢性の下痢、粘血便を伴い、消化吸収障害による体重減少を伴います。国の特定疾患として難病に入っています。
 症状だけでは判断できないことも多いので、下痢が止まらない場合や血の混じった下痢(粘血便)を認めた場合は専門医の受診が勧められます。

ウイルス性胃腸炎

  • 冬場にみられる流行性の急性胃腸炎は、昔から小児の腸感冒などといわれてきました。
  • その原因のほとんどはウイルス性で,ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、アデノウイルスなどです。
  • このうちノロウイルスによる感染性胃腸炎が特に多いです。小児では冬から春先にかけロタウイルス感染がよくみられます。 このうちノロウイルスによる感染性胃腸炎が特に多いです。小児では冬から春先にかけロタウイルス感染がよくみられます。
     
  • このウイルスは1年中いますが、インフルエンザウイルスと同様、低温、乾燥時にウイルスの増殖が活発となり、人から人へと 経口的に強い感染力を持っています。
      
  [感染源]

  • ノロウイルスに汚染されたカキなどの2枚貝(貝は海水中のウイルスを濃縮する作用あり)
  • ノロウイルスに汚染された調理人の手を介した食品や飲料水、ドアのノブなど
  • 嘔吐物や糞便などが乾燥し飛沫粒子による空気感染(病院、老人施設、保育所、ショッピングセンター、電車などの人混みなど)

    [ノロウイルスの特徴]

    • 人の腸管内でのみ増殖し、貝や食品中では増殖しません
    • 少量でも感染力が強く、乾燥、低温、アルコール、酸に強い
    • 抗生物質は効果なくむしろ害になります
    • 次亜塩素酸か加熱による殺菌しかありません
    • 人への感染で潜伏期間は1−2日間

    [症状]
    • 感染して1−2日目より突然の嘔気、嘔吐、水様下痢、腹痛
    • かぜ様症状:頭痛、寒気、発熱(高熱はまれ)、全身倦怠感
    • 小児や高齢者では脱水によるショックや腎不全、全身症状をともなうことがあります
    • ロタウイルスの方がノロウイルスより症状が激しく、発熱や米のとぎ汁のような下痢(仮性小児コレラとも言われる)がみられます

    [診断]
    • 流行期の症状、病歴による疫学的な診断
    • ノロウイルスの細胞培養は成功していません
    • 酵素抗体法、迅速診断としてイムノクロマト法、リアルタイムPCR法などがあるが高価で医療保険には未収載です

    [治療法]
       
    • 抗ウイルス薬は現在のところありません。抗生剤はむしろ禁忌です
    • 脱水症状に注意しながら、水分や栄養補給と安静、保温などの対症療法で自分の体に抗体ができるのを待つことです
    • 嘔吐、下痢は人体がウイルスを排除しようとする生体反応であり、むやみに強い止痢薬、鎮吐薬の投与は不適当です
    • 免疫を高める意味で初期に葛根湯や脱水の改善に五苓散が有効なことがあります(自験より)     
    • 普通は数日で症状が治まることが多いです

    [予防法]
      経口感染する感染力の強いウイルスなので予防がもっとも大切です

    • 人込みに行くときはマスクをし、帰った後は石鹸で手洗い、うがいを励行
    • 患者の便や嘔吐物はペーパータオルで処理し廃棄する     
    • ドアノブ、水道の蛇口、トイレの便座も次亜塩素酸溶液で消毒する
    • フトン、タオルは加熱消毒をする
    • インフルエンザの流行で手洗い、うがいを励行した結果、ウイルス性胃腸炎の流行がみられなかったこともあります