アルコールとタバコ

アルコール
  • 人間とお酒のかかわりは紀元前2600年のメソポタミア時代から祭事や祝い事の際に使われてきました。
  • 昔から「酒は百薬の長」とか「酒に十徳あり」とか酒の効用が言われ、心や身体のやすらぎ、高揚感でもって人間関係を良好なものにする道具ともなりました。
  • しかし習慣性、依存性があり飲みすぎると心身に害をもたらすことも事実です。「酒は一害あって一利あり」「タバコは百害あって一利なし」ということわざもあります。
  • 代表的な嗜好品であるアルコールとタバコについて正しい知識を持ちましょう。





  • アルコールは胃・十二指腸から吸収され肝臓にてアルコール脱水素酵素(ADH)、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)により最終的に水と炭酸ガスに分解されます。
  • 80%以上はアルコール脱水素酵素(ADH)で分解されますが、ミクロゾームエタノール酸化系(MEOS)も分解に関与します。常習飲酒を続けると酒に強くなるのはMEOSが活性化するためです。
  • 日本人の40%はALDH2がないためアセトアルデヒドが血中に溜まり、飲酒ですぐ赤くなったり、悪酔いの症状が出やすいです。このような人がアルコールの一気飲みをすると死亡する危険性もあります。
  • アルコールはそれを分解するのにエネルギーがかかり、体の蓄積エネルギーになりません。そのため食物を摂らず空酒ばかり飲んでいると栄養失調でやせてしまいます。
  • 血中からアルコールの消失時間は、ビール1本、日本酒1合で約3時間かかります。そのつもりで飲酒しましょう。
        



  • アルコールの血中濃度と酔いの状態のイラストです。
  • ビール1ー2本、日本酒1−2合あたりのほろ酔い期では、脳の抑制が取れ、陽気になったりストレス解消に有効です。
  • それ以上の酩酊では、麻酔薬と同様、、脳神経細胞が麻痺し身体に危険な状態になります。


アルコールの効用

  • 血管を拡張し血液の循環を良くし新陳代謝を高める。
  • 善玉コレステロール(HDLchol)を増やし、抗動脈硬化作用を有する。
  • 少量適度の飲酒者は、まったく飲酒しない人や大量の飲酒者にくらべむしろ長寿となる(Jカーブ)。
  • 鎮静作用を有し、大脳の抑制が取れ、精神的な緊張をやわらげ、ストレス解消に役立つ。
  • 団らんや人間関係を円滑にし、人生を楽しく豊かなものにする。


アルコールの害

  • アルコールの急性影響では、一気飲みによる急性アルコール中毒、酩酊による事故、飲酒運転による交通事故などが主なものです。
  • 慢性の影響では種々の臓器に影響がでます。起こしやすい臓器では肝臓では脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変など、膵臓では慢性膵炎、脳神経系ではアルコール依存症(いわゆるアル中)、アルコール性心筋症、消化吸収障害による栄養失調、消化性潰瘍などだあります。
  • 女性では生理不順、不妊、胎児奇形、発育不全にもつながりやすいです。
  • 未成年者が飲酒をしますと、急性アルコール中毒になりやすいです。
  • 未成年者の飲酒が慢性に続くと、身体、精神の発達不全を起こし、非行や犯罪、交通事故につながりやすくなります。
  • 寝つきを良くするために寝酒をすると、レム睡眠が抑制され熟睡を妨げかえって不眠になったり、寝酒が続いてアルコール依存症に陥る危険性もあります。










  • 飲酒後の交通事故、特に悪質なひき逃げ事故により子供を含む家族の命が奪われるいたましい事故が続き社会問題となりました。
  • このことをふまえ平成19年9月19日道路交通法が改定になり、飲酒運転の罰則が強化されました。
  • 交通事故死者数は30年前は17000人、15年前は約1万人でしたが、交通安全の意識と取り締まりの強化により徐々に事故数、死者数ともに減少し、最近では交通事故死者数は5000人以下になってきています。(平成22年1月3日、北日本新聞)
        
  • 当然のことながら飲んだら乗らない、乗るなら飲まないを守りましょう。




  • アルコール健康医学協会では、健康によく、社会にも迷惑をかけない正しい飲酒ということで、適正飲酒の10か条を提唱しています。


    タバコ


    • タバコは西暦1500年頃、コロンブスの航海により西インド諸島からヨーロッパに伝わり、日本ではポルトガル人による南蛮貿易の際、九州より全国に広まりました。
    • 古くからか神々に奉げる儀式、呪術師の祭式、戦士や貴族の嗜好品としてたしなまれ、生活の憩いや疲れを癒す目的で徐々に庶民に浸透していきました。
    • しかし習慣性、依存性があり、身体に様々な害を及ぼすことが明らかになっています。

      タバコの成分

        1. タール   
          タールは、タバコに含まれる粒子成分のうちフィルターに付くヤニ成分の総称です。タバコの煙中に100種類以上の発がん物質やニコチンを含む粒子です。
            
        2. 一酸化炭素  
          一酸化炭素は酸素に比べヘモグロビンの結合力が200倍以上強く、その結果、循環血液を通し全身の酸素欠乏をきたします。また血管壁や血小板を傷害し動脈硬化を促進させます。
                    
        3. ニコチン  
          ニコチンはコカイン、カフェインと同じく脳内にドパーミンを作り麻薬のような快感作用を起こします。そのため疲れが取れたように感じたり、その快感を求めてタバコの依存症が引き起こされる訳です。また禁煙しようとしてもニコチンの禁断症状のためなかなかうまくいかないのです。
            

        タバコの害

        • 一酸化炭素、ニコチンの作用による血流障害、動脈硬化促進作用。タールや各種発がん物質によるがん化の促進。生活習慣病の最大の危険因子と言われています。
        • 特に若年者の喫煙は将来、種々の病気の危険因子になる可能性が大です。
              
        • 困ったことに体に有害とわかっていても、一度喫煙習慣がつくとその依存性のためになかなか禁煙できないことです。
              
        • 依存性が強いことより、タバコは嗜好品というより薬物中毒であると言っている人もいます。

        • 費用も1日1箱の喫煙を1年間続けると約10万円。20〜30年で新車が1台買える費用になります。
              
        • 日本全体でタバコ関係の損失が5兆円と試算している人もいます。

        • 米国の環境保護団体の調査では世界の海のごみのうちタバコの吸い殻が最多と報告しています。(平成19年8月6日 北日本新聞)
              
        • 子供の誤飲事故に占める割合はタバコが3割と30年連続で最多です。(平成22年2月1日 北日本新聞)
              
        • 「タバコは百害あって一利なし」ということわざをかみしめましょう。
              
        • 依存性とその害の危険性を考えると最初から喫煙しないのが最も大切です。
           


              
        • 呼吸器疾患 
            慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息
        • 動脈硬化性疾患
            脳血管障害、狭心症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、糖尿病
        • 消化器疾患 
            胃・十二指腸潰瘍
        • 歯周病 
              
        • 骨粗鬆症
              
        • すべてのがん ( )非喫煙者に対する倍率
            咽頭・喉頭がん(3.0倍) 肺がん(4.5倍) 食道がん(2.2倍)胃がん(1.5倍) 大腸がん(1.3倍) 膵胆道がん(1.5倍)膀胱がん(1.6倍)



          受動喫煙




        • 喫煙者の吸入する主流煙より周囲に及ぼす副流煙(受動喫煙)の方が有害物質が多く刺激が強いことが知られています。
        • よって自分自身が喫煙しなくても、家庭内で家族が受動喫煙により様々な健康障害を引き起こすことがあります。


          禁煙


        • 禁煙により表のように良いことが多数あります。




        • 日本の口腔外科、呼吸器、循環器、産婦人科学会などの9学会合同でまとめた禁煙ガイドライン2005では薬物療法以外に行動療法を提唱しています。




        • 禁煙の補助薬




        • なかなか禁煙できない理由は脳神経のニコチン依存度が強く、禁断症状が出るためです。
        • そのニコチンの禁断症状をやわらげる補助としてニコチンガムやニコチンパッチがあります。
        • 喫煙しながらでも禁煙効果が期待できる、ニコチン受容体に拮抗する経口薬が開発され、2008年4月に発売になりました。バレニクリン(商品名、チャンピックス、ファイザー製薬)
              
        • その使用方法を誤ると危険なため、禁煙指導の専門の医療機関で相談が必要です。







【図の引用】

      
  • アルコール健康教育教材「お酒と健康を考える」 企画・制作:社団法人 アルコール健康医学協会
           
  • 「タバコをやめよう」 石井正敏(日本禁煙推進医師歯科医師連盟会員) 砂書房

  • 「チャンピックス」パンフレット  ファイザー製薬