早期胃癌の内視鏡的治療

 胃癌検診やドックを契機に自覚症状のない時期に早期胃癌が発見されることが増えています。大部分は外科的な胃切除術で治療されますが、中には内視鏡的な治療にて根治する人もいます。
〔適応〕
  • 胃腺腫
  • 早期胃癌 潰瘍を作らず粘膜内に留まる2cm以内の分化型腺癌
  • 内視鏡的粘膜切除術
    Endoscopic Mucosal Resection (EMR)

    粘膜下に生食水を注入し
    病変を隆起させる
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    把持鉗子で持ち上げスネアで
    拘扼し高周波電流で切除する

    把持鉗子ごと病変を回収する
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    虫ピンで病変を広げ病理検査に提出
    EMRの実際の症例
     78歳、女性。高血圧で加療中、胃検診にて隆起製病変を指摘され紹介されました。胃内視鏡検査にて前庭部の前壁に15X10mmのポリープ状の隆起を認め、胃生検で高度異型の胃腺腫でした。胃粘膜切除した結果は一部に高分化腺癌を伴った腺腫内癌でした。ピロリ菌陽性

    前庭部の隆起病変

    基部に生食を注入し隆起させる

    把持鉗子とスネアで切除中

    クリップにて潰瘍を縫合中

    切除標本を回収中

    切除一週間後の潰瘍

     


    [ESDの実際の症例]

       EMRは比較的短時間で粘膜病変の切除が可能ですが、一方、少し大きな病変では一括切除が困難で病変の取り残しが生じたり、術後の病変部の組織学的検索が十分にできない場合があります。この欠点を克服するため開発されたのがESD(Endoscopic Submucosal Dissection)です。高周波を使い切除するのは同じですが、ITナイフ(insulated tip electrosurgical knife)、フックナイフ、フレックスナイフなどいずれも深く切れ過ぎないような工夫をした針状のカットナイフを使います。2cm以上の大きな粘膜病変でも一括切除可能ですが、技術に熟練が必要なことと時間がかかり、出血、穿孔などの合併症もやや多いのが難点です。
    74歳、女性。直接内視鏡による胃検診にて発見された胃体部前壁の早期胃癌。切除標本で粘膜面に留まる c 8x5mm。 ピロリ菌陽性

    胃体部に小陥凹性病変

    色素散布と周辺のマーキング

    粘膜下に生食水を注入

    ITナイフで切開・剥離中

    切開・剥離後の胃病巣

    回収後の切除標本

    74歳、女性。胃検診にて発見された胃体部後壁の平坦隆起型早期胃癌。  切除標本で27x14mm の粘膜内に留まるa 。ピロリ菌陽性

    胃体部に広範な隆起性病変

    色素散布と病変周辺のマーキング

    粘膜下に生食水を注入

    ITナイフで切開・剥離中

    切開・剥離後の胃病巣

    回収後の切除標本